小さな星がほらひとつ

長距離ソロランの話

『おれはまだ挑戦できる』

ということを確認するために

不定期で長距離ソロランをしてる。

 

きっかけとなったのは

2016年3月30日。

 

まだ東京に住んでたとき、

20代の後半をどう生きていこうかと

ずっとモヤモヤして悩んでたとき

 

近所のTSUTAYAで借りた

登山家のドキュメンタリー映画を観て

そのチャレンジ精神に心を打たれ、

 

『おれは大学のときのように、

 サクッと限界に挑戦できるのか?』

 

ということをふと確かめたくなり

映画が終わってすぐ歩き始める。

 

目的地を決めず、
とりあえず横浜に向かって

心と体が限界を迎えるまで

歩き続けようと決めた。


この時点で夜中の1時。

人けのない暗い大通りを

ただただ歩き続ける。

 

そこから約11時間

ほぼぶっ通しで歩いた結果、

体中の筋肉と関節が悲鳴をあげ、

ついに心も限界を迎える。

 

それがお昼12時。

横浜は余裕で越えて

鶴岡八幡宮でギブアップした。

体のどこを動かしても痛い。

 

文字通り、もう

「一歩も進めない」状態。

11時間で約45キロも歩いた。

 

満身創痍で

頭もぼーーっとする中、

映画の勢いだけで家を飛び出し

限界まで挑戦できる自分が

まだいることを知る。

 

この後、

新卒で入った会社を

パッと辞めて大阪に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二回長距離ソロランは

2016年8月30日(火)

 

京阪電車の終点、

「出町柳駅」まで行って

家まで帰ってくる企画。

 

出町柳まで特急で50分くらい。

その圧倒的な距離の遠さに

まだはじまってもないのに

すでに絶望してる。

 

今回は自分の中にある

甘えを断ち切るために

終電で出町柳駅に降り立つ。

 

改札を出て河川敷に降り

軽くストレッチをしてから

鴨川を大阪方面にひた走る。

 

結果、

5時間ほど走り

樟葉駅でギブアップ。

25キロ走ったあたりで

もう帰ろうと思い、

始発に乗って帰る。

 

このとき

体はまだいけたかもやけど、

心がもうやめときーゆーてた。

 

この企画は

ほんとうに過酷だ。

 

誰にも伝えないから

誰にも応援されない。

 

はじめのほうは

まだいろんなことを

考える余裕もあるけど

 

中盤からは

体の痛みをどうやって

カバーするかだけを考えるようになる。

 

ずっとずーっと

自分の体と心と、

向き合い続ける時間。

精神と時の部屋のような。

 

それが「長距離ソロラン」だ。

 

何の責任もないし

誰が見ているわけでもない。

 

だから、

軽い気持ちではじめたら

軽い気持ちで終わってしまう。

 

次がもしあるなら

人生の道に迷ったときに

挑戦しようと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな前回から

約5年の歳月が流れた

2021年8月3日。

 

第三回目となる長距離ソロラン、

『第二回出町柳からラン』を実施。

 

今回はほんま人生どん底で

自分の積み上げてきたものが

何もかも信じられなくなってて

どう生きていけばいいかさえ

わからなくなってた。

 

でももう一度自分を信じたい

そんな願いから走るべきだと決意。

 

前回とは違い、

絶対に完走したいという

強い気持ちで臨んだ。

 

完走というのは

出町柳駅から家までの

約50kmくらいの道のりを

走破すること。

 

まだ日の落ちてない18時に

出町柳からスタートする。

 

4時間後の22時、

ようやく樟葉に到着。

 

サクッと書くが、

ここまでで約23km。

 

いつもそうやけど

長距離ソロランするときは

人生にいろいろあって

まーーーったく運動してないので

体がはじめからぼろぼろ。

 

まだ23㎞。

折り返しの距離にも来てないのに

すでに筋肉と関節は限界。

クソ満身創痍だ。

 

でも体は悲鳴をあげてても、

心はまだがんばろうよと言ってたから

もう少しがんばってみることに。

 

「ごめんね」

「ごめんね」

 

そう体に声をかけながら

足を引きずって歩く。

 

一歩前に踏み出すごとに

体が悲鳴をあげている。

 

ほんとうに

毎回思うことではあるけど

なんでこんなことをしてるのか

自分でもよくわからない。

 

 

 

夜中の1時半。

歩き始めて8時間が経ち

守口市に着いた。

 

この時点で

出町柳から41km。

 

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ずっと体を労い

励まし続けてきた心が

この時点で、折れた。

 

絶対に完走すると決めたのに、

心と体がもうそれを拒否した。

 

もう一歩も歩けない。

心身ともにほんとの限界を迎え

しんどすぎて泣きそうになる。

 

動悸がする。

体がギシギシ軋んでる。

一秒でも早く、家に帰りたかった。

 

ただ電車はない。

タクシーを止める。

 

悔しさを噛み締めながら

家路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も今回で

完走できなかったこと

は悔しいけれど、

 

それでも

5年前と同じくらい

長い道のりを一人で歩いたし

そしてなにより、

心が折れるまで前に進めた。

 

今回頑張れたのは

嵐の「カイト」のおかげだ。

 

何度も

何度も

何度も

何度も、

 

電車に乗りたくなったし、

諦めたくなった。

 

でもカイトを聴きながら

オリンピックのこと考えながら

絶対に自分に負けちゃだめだと

強く願い続けた。

 

8時間ぶっ通しで

カイト一本で乗り切った。

 

この曲、大好きだ。

自分を励ますように聴き、

聴き、歩きながら泣いた。

 

歩いて

聴いて

泣いて

歌って

励まして

また歌って

泣いて

歩いて歩いて。

 

泣きながら思った。

 

泣ける仕事がしたいと。

感動をつくる仕事がしたい。

そうやって生きていきたい。

 

素直にそう思えた。

それだけで今回歩いた価値がある。

 

おれは学生を感動させよう。

人生、生きてたらほんまに

大変なことも辛いことも

もういっぱいある。

 

そんなときに、

いつでも原点に立ち帰れるような、

そんな最高の記憶をつくろう。

 

そしていつでも

戻っておいでと言えるような

優しくて愛ある場所をつくろう。

 

そういう方向性に

ここからの人生は舵を切ろうか。

 

よかった。挑戦して。

無駄なことなんて一つもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大丈夫だと思った。

 

しつこいけど

この企画はもう辛い。

 

楽しさなんて

なにひとつなくて

ほぼ辛いだけの時間。

まさに苦行。

 

体が悲鳴をあげてから

ずっと逃げたかった。

ずっと諦めたかった。

ずっと投げ出したかった。

 

一歩前に踏み出すごとに

弱い自分が問いかけてくる。

 

「もうやめたら?」

「何の意味もないよ?」

「なんでここまでするの?」

「電車乗ればラクになれるよ?」

 

だって

誰も見てない。

誰にも言ってない。

意味なんて、そもそもない。

 

でも逃げなかった。

でも諦めなかった。

でも投げ出さなかった。

 

誰の目がなくても

誰に応援されなくても

たった1人だけでも

ここまでできるんだ。

 

完走は今回も出来なかったけど

「限界までやる」と決めたら

決めた通りに出来る人間だと

再確認することができた。

 

だから

大丈夫だ。

 

自分が決めて

決めたことをやる。

 

それが間違ってる

わけがないんだから。

 

合ってる。

生き方や在り方。

 

素直に

正直に

真っ直ぐに。

 

自分の生きる道が

間違ってないということを

意味のない挑戦にて悟る。

 

 

 

 

 

 

 

 

長距離ソロランをするとき、

それは「人生の節目」のとき。

 

だから体なんて整ってない。

でも体が整ってないことは

「やらない理由」にはなりえない。

 

だからやるんだよ。

できるからやる。

できそうだからやる。

そうじゃないんだ。

やると決めて、やるんだ。

 

おれは

おれを肯定する。

 

できるよ

できたよ。

 

積み上げるってのは

こういうことなんだ。

 

誰かから受けた評価は

誰かから受ける批判で

一瞬で消え去る。

 

でも

自分で決めて

やり遂げた経験は

誰からも奪われることもないし

目に見えない財産として

積み上がっていくんだ。

 

おれは

限界まで歩くことで

「0」を「1」にした。

これが重いんだよ。

 

でもやった。

だからあとは大丈夫だ。

 

よくやった。

ほんとによくやった。

 

一旦は体を整えて、

仕事に集中できるようにする。

 

この先、生きていく中できっとまた

長距離ソロランをする日がくるだろう。

 

できればもう二度としたくない笑

でも、おれはするんやろうな。

 

自分で限界まで歩くと決めて、

ほんとうに限界まで歩く。

 

たったそれだけの

超シンプルなことなんだ。

 

人生で迷ったら、歩け。

それが答えだ。

 

体よ、心よ。

無理させてごめんな。

よくがんばってくれました。

ほんまありがとう。

 

永遠に眠い。

 

やることだけやって、

今日はもう休む。

 

ありがとう。

おめでとう。

 

すべての

出会いと出来事に

心からの感謝を。