鶴太郎さんの尊敬する、良寛さんという俳句をたくさん残した人がいる。
そのうちのひとつ、
「ぬす人に取り残されし窓の月」
という俳句が特に好きなのだそう。
良寛さんはほとんど物を持たずに、身ひとつで生きてきた人で、持っていたのはせんべい蒲団と掛け布団だけだった。
ある夜、そのペラペラ蒲団で寝ていると、なにを間違えたか泥棒が入ってきた。
しかし良寛さんの庵には盗むようなものはなにもない。
なにもないところからなにを持っていったかというと、数少ない所持品の掛け布団を持っていこうとしたのだ。
すると良寛さんは、
「掛け蒲団を持っていくのか。こんなところから物を盗むなんて気の毒な人だなぁ」
と思って、寝返りをうつふりをして体をずらし、泥棒に掛け蒲団を持って行かせたそう。
泥棒が出ていった後、
「ああ、たった一枚の掛け蒲団もとられたか」
と思いながらふっと空を見ると、丸い月が夜空にぽっかり浮かんでいる。
良寛さんは、泥棒もさすがにこの月だけは持っていけなかったのかと、このとき詠んだ句が、
『ぬす人に取りのこされし窓の月』
である。
なんて無欲なんだろう
なんて心の豊かな人なんだろう
そう鶴太郎さんは良寛さんに思うそうだ。
おれも本当にそう思う。
おれは、心の豊かな人になりたい。
きれいなものをきれいと感じる、
そんな歳のとりかたをしていきたい。
心の豊かさは金儲けと関係がない。
どれだけ自分と対話し、その声に正直であり続けたか、だ。
おれの心はいまここにある。
関東で暮らしていると、資本主義に引っ張られる。
なにか事を為したり、大きな影響力を持つことが幸せだというほうに、どこまでも引っ張られる。
おれは、おれの幸せはそこにはない。
己の幸せを追求すること。
その先に、必ず良い出会いがある。
鶴太郎さんと同じ時代に生きれてよかった。
自分の生きたい生き方を追求してる人がいて、ほんとうによかった。
もっとシンプルに生きます。
明日は海にいこうと思う。